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本を読んで社会をのぞき見

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「政治的秘境」が俺を呼んでいる アヘン王国潜入記

アヘン王国潜入記 (集英社文庫) 

 

 

この本書いたのどんな人

 この本を書いたのは、ノンフィクション作家であり、

「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。

としている方だ。

私にとっては、誰も行きたがらないところへ行き、誰もやりたくないようなことをする物好きなおじさんという印象だ(いい意味で個性的)。

 

著者のオフィシャルサイトをのぞいて見たら、予想に反した細面で、ぱっと見は繊細な印象のお方でした。

オフィシャルサイトはこちら↓

辺境・探検・ノンフィクション 作家 高野秀行オフィシャルサイト

なんでそんなことするかなぁというようなことを書き綴ったたくさんの作品がブログで紹介されています。 

ブログはこちら↓

辺境・探検・ノンフィクション MBEMBE ムベンベ

 

内容 

著者は、「未開の土地」に強い憧れを抱いていた。

大学時代には、コンゴへ未確認生物ムベンベを探しに行くなどしている。

しかし、著者の生まれた時代には、地理的な探検ができるような場所は、ほとんど残されてはいなかった。

そのため、著者の好奇心は、外部の人間が滅多に足を踏み入れることのない「政治的秘境」へと向かう。

そんな著者が、「政治的秘境」として行き先に選んだのが、アヘンの生産地とされるビルマ(ミャンマー)のワ州だった。

 著者は、アヘンの産地に単身入り込み、その地の人と生活を共にしながら、アヘンの種まきから収穫、そしてアヘンを吸っちゃった上に中毒にまでなった。

 

この本は、その全てを記録したものだ。

 

私の感想

旅の行き先を、人はどうやって決めているのかな。

思うに、綺麗な景色を見たいとか、美味しいものを食べたいとか、何もしないでのんびりしたいとか、そこでしかできない体験をしたいとか、かな。

著者はというと、自分にしかできない体験をしたいようで、ほとんどの人が選ばない旅を選んでいる。

 

私からすると、著者はよほどの物好きなんだろうなと思うけど、それを文章にして本にまとめ、生活の糧にしているのだから、ここまでいくと、物好きも立派な職業だ。

 

加えて、著者の行動力には、いつも感心させられる。

何処へでも行くということのほかに、誰とでも身構えず話せる、そして、現地のものを共に食べ、眠る。

この本ではさらに、「政治的秘境」たる所以に迫る政治的な背景も探っているし、なんといっても、アヘン中毒になるなんて、それはさすがにやりすぎだろう。

 それでもなんだか許せちゃうのが著者の憎めないところで、「たった一人の弟が結婚する」といって、あっさり帰ってくるところもいい。

 

この本は、とにかく私は行きたくないけど、なんだか羨ましい不思議な旅の本なのだ。

 

 

 

 

*私の好きな「高野秀行」おすすめ5選

tetuneco.hatenablog.com

 

心と響き合う読書案内 暖かな読書時間をあなたに贈る本

『心と響き合う読書案内』小川洋子



この本は、著者が本を紹介するラジオ番組をまとめたもので、

季節に応じ、いろんなジャンルの本52冊を紹介する本である。


著者の本は、書店でもよく見かけるし、映画にもなっている。

(この辺りが有名ですかね↓)
博士の愛した数式 (新潮文庫)

でも、私は手に取らないままにいた。

著者が書く、優しくて繊細そうな本たちは、

薄汚れた私に、なんだかちょっとキレイすぎる気がするのだ。


とはいえ著者の本は、気になる。。ので、

著者の心に響いた本を知り、

そして、著者が本をどんな言葉で表現するのかを知ることで、

ちょっと著者を感じてみようと思い、この本を手に取った。


目次をチェックすると、私の好きな本も数冊紹介されていた。

『銀の匙』、『流れる星は生きている』、『羅生門』、『モモ』、『銀河鉄道の夜』、『賢者の贈りもの』

薄汚れた私でも、さあて、どれから読もうかと、ワクワクする選書。。



そうして、本文に目を通すと、
いいじゃないか、響くじゃないか、やっぱり優しいじゃないか。

この本のおかげ、著者のおかげで、
来年も、いい本に出合えそうな気がしてならない。

さてさて、ここに本日記を書いて3年になる。
そして、一昨年からかな、恥ずかしくない範囲の人に、
ここのアドレスを書いた年賀状を出してみた。

おかげさまで、ここを訪れてくれる人も増えた。
そして、今年の年賀状には、すべてにアドレスを書いた。

私のブログを通じて、一人でも多くの人に、本との素敵な出会いがありますようにと、
願ってやまない。


そして、この本は、素敵な本との素敵な出会いを提案する、とてもいい本だと思う。

さあ、私も読もう。
どんな本との出会いが待っているのか、楽しみだ。




*おすすめの読書術の本あります
tetuneco.hatenablog.com

【おすすめ】私の好きな「江國香織」おすすめ5選

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 こんにちは、tetunecoです。

 

恋愛小説はほとんど読まない私ですが、数年に一度くらいのペースで、読みたくなるのが、江國香織さんの描く恋愛小説だ。

 

気がついたらスパッと切れた切り口から血が滲んで、後から痛みがじわじわくるような感じで、彼女の作品は、読み手の心を鮮やかに傷つけ、そこから彼女の綴る言葉が染み込んで、じわじわと心を締め付ける。

 

恋愛小説だけではなく、児童文学や詩も書く彼女の綴る物語は、表情豊かだ。

 

 

 がらくた (新潮文庫)



この本は、島清恋愛小説文学賞受賞作とのこと。
でも、この本、恋愛小説じゃないなと思う。読んでいてそう思った。多分世間一般の「恋愛」の定義から外れてしまっている。とことん愛を突き詰めたい方に。

詳しくはこちらを↓

絡み合う思考 恋のすべてが私を締め付ける 

 

 

きらきらひかる (新潮文庫)

 

ホモの夫にアル中の妻。セックスレスでも傷つけあっても、離れられない二人。

出会わなければよかった、と思う恋もある。

それでも、出会ったが最後、その切なさに身を投じずにはいられない。

詳しくはこちらを↓

きらきらひかる 触れば切れそうなガラスのかけら 

 

 

ぬるい眠り (新潮文庫)

 

この本は、著者の「きらきらひかる」の10年後を描いた作品ほか9編からなる短編集。

短編集なので、ちょこちょこ休憩しつつ時間をかけて江國作品を味わえます。

短編でも、エスプレッソ的に恋のエキスは詰まっています。

 

詳しくはこちらを↓

ぬるい眠り 傷つかない恋などあるものか 

 

 

 

ぼくの小鳥ちゃん (新潮文庫)

 

 

ぼくと小鳥ちゃん、そして、ぼくとぼくの彼女と小鳥ちゃん、不思議な関係が、なんともいえない柔らかで、読んでいて居心地がとてもいい。

お休みの日の午後に、ゆっくり味わってほしい本です。 

 

 

間宮兄弟 (小学館文庫)

 

ギリギリの恋愛とは対照的に、もてない君の兄弟が主人公のお話です。

恋愛に疲れたとかとか、生きてるってなんだかなぁというような日に、この本を読んで、力んだ体をほぐしてください。

 

 

以上、5冊でしたー!

 

 

*おすすめの本あります

tetuneco.hatenablog.com

 

 

見えない人の世界を体感する あなたは視野から解き放たれる

目の見えない人は世界をどう見ているのか 伊藤亜紗(光文社新書)

 

この本書いたのどんな人

 この本を書いたのは、東京工業大学リベラルアーツ教育院の准教授をされています。

 

リベラルアーツ・センター時の著者のページ↓

asaito.com

 

リベラルアーツってなんだ?って調べてみたら

伝統的な科目群の位置づけや内容に現代的な学問の成果を加え、やはり大学で誰もが身に付けるべき基礎教養的科目だと見なした一定の科目群に与えられた名称で、より具体的には学士課程における基礎分野 (disciplines) のことを意味する。この現代的な分類では、人文科学自然科学社会科学、及びそれぞれの一部とみなされる内容が包括されることになる。

リベラル・アーツ - Wikipedia

 

わかったようでわからぬ説明ですが、そんな中で、著者は美学、現代アートを専門としておられます。

 

内容

本書はいわゆる福祉関係の問題を扱った書物ではなく、あくまで身体論であり、見える人と見えない人の違いを丁寧に確認しようとするものです。 

 

この本では、空間認知、手や耳の感覚、見えない世界での体の使い方、言葉など、見えない人たちとの対話を通して、見えない人が見ている世界を丁寧に解説していきます。

 

とはいえ、著者曰く

見えないことと目をつぶることは全く違う

 とのこと。

 

この本を読むことで、目が見える人が目をつぶるだけでは想像できない、目に頼らない世界を、頭の中で作り上げることができると思います。

 

私の感想

 

この本を手に取った私には、目が見えない人の世界を理解しようという、上から目線のおごりがあった。

興味本位な態度だった。

見えない人は、見えないと思っている人がほとんどだろうし、私もそうだった。

 

しかしそうではない。

見ることが、目の前に何があるか、それがどんな形で、何色なのかを知る、ということだと考えれば、目で見ることが、見るということの全てではないことがわかる。

 

見える人は、見えるがゆえに、物の裏側、自分の後方など死角が生じる。

しかし、見えない人は、

 視野を持たないゆえに視野が狭くならない。とんちみたいですが、私たちの先入観を裏切る面白い経験です。

 

この本を読んで、私自身、様々な行為で、見ていることがわかった。

例えば、本を読んで物語の情景を思い浮かべることも、見ることに等しいように思う。

 

見える人が上から目線でいる以上、体感できない世界を、この本では気づかせてくれた。

 

週末には、美術館に行ってみようと思う。

見えない人と歩くならと想像しながら、鑑賞して見たいと思った。

 

 

目の見えない人は世界をどう見ているのか 伊藤亜紗(光文社新書)

 

 * オススメの新書あります

tetuneco.hatenablog.com

 

 

走れ!芽野!おい!ちょい待て、そっちじゃない!だから踊るなって!

新訳 走れメロス 他四篇 (森見登美彦) 

 

この本書いたのどんな人

森見登美彦氏は、どんな人なんでしょう。

 

あ、いや、ここにどんな人なのかを調べて、書くのは私でした。

なんと言いますか、いつもならウィキペディアで調べて、ちょちょっと経歴を貼り付けるだけで済ませているわけですが、実は私、森見登美彦さんのファンでありまして、こんな人ですよ、というふうに、森見氏のことを簡単に形容したくない気持ちなのです。

まあ、作品を読ませていただく限りではきっと、妄想ほとばしるお茶目なお方なんだろうなと思われます。

 

この度、調べて初めてわかったことですが、はてなブログを使用しておられました。

これは嬉しい。

しかも、著者のブログは、大変なまったりぶりでありまして、ますますファンになりました。

ブログはこちらです↓

d.hatena.ne.jp

 

 

内容

この本では、大人の暴走ファンタジーをお書きの著者が、

「山月記」、「藪の中」、「走れメロス」、「桜の森の満開の下」、「百物語」を、

著者の妄想力を最大限に発揮して、いつもの森見ワールドへと変換している。

 

そしてやっぱり、4つの物語の舞台は、大学。

もちろん登場するのは、一筋縄ではいかない男子学生の面々だ。

そして女の子は、男たちにつれない。

 

4つの物語が、登場人物でゆったりとつながっているのも素敵だ。

 

この本は、 元の物語と森見ワールドを同時に楽しめる、読書上級者向けの本だと思う。

 

私の感想

過去の名作を、著者がどう料理するのかが楽しみで、この本を開いた。

読んでみると、元の物語のモチーフを生かしつつ、全くもって著者の世界観に仕上がっていて、感嘆するやら何やら。

しかも、偉大な名作をモチーフにしているだけあって、いつもの馬鹿馬鹿しさにも何やら崇高な幻想のように感じる。不思議な感覚だ。

 

 

ファンタジーというと、勇者や賢者、妖精なんかが出てきて、冒険をしたり、お姫様を助けたりする。

著者が書く大人ファンタジーはこうだ。

己を貫く悩める男たち(勇者)や、なんとなくまともな人(賢者)、遠くから見るだけの憧れの女子(妖精)が、京都の街を舞台に、勇者は片思いを貫き、男のロマンを達成する。

 

いつまでもこうあってほしい。

 

 

* 私の好きな森見登美彦10選

 

tetuneco.hatenablog.com