dokusyo

本を読んで社会をのぞき見

読書記録・本のおすすめ・その他もろもろ

お城好き必読! いつかは行きたい現存12天守閣を巡る旅を本で  

現存12天守閣 山下景子(幻冬舎新書)

 

この本書いたのどんな人

著者をどんな人か調べてみたら、ウィキペディアに評論家とあった。

しかし、何の評論家なのかは、よくわからなかった。

そこで、著者の公式ホームページを覗いて見ると、「季節の言葉と美しい日本語」をテーマとされたページを運営されていました。

美しい日本語をテーマとする本もたくさん書かれておられて、日本語をこよなく愛する方なのかなと思います。

 

気になる方はこちらをどうぞ↓

http://yumenokotonoha.com

 

 

内容

日本には、たくさんのお城がありますが、現在、建てられた時の天守がそのまま現存しているのは、

 弘前城(青森県)、松本城(長野県)、丸岡城(福井県)、犬山城(愛知県)、彦根城(滋賀県)、姫路城(兵庫県)、松江城(島根県)、備中松山城(岡山県)、丸亀城(香川県)、松山城(愛媛県)、宇和島城(愛媛県)、高知城(高知県)

の12天守です。

 

この本では、ひとつひとつの天守について、作られた時代背景や暮らした人々、そして、現在の様子が、美しい日本語と著者の感性で旅していくように書かれています。 

この本を読むだけで、繊細に描かれた水彩画のように、天守の姿を思い描くことができそうです。

 

もちろん、誰がどういう経緯で建てられたのか、いかにして天守は守られたのかといった、天守に関する歴史的解説も丁寧になされていて、歴史ファンも納得の一冊ともいえます。 

 

私の感想 

何を隠そう私は、お城好きだ。

通っていた高校が、お城の側だったことが、私の城への愛着を育てたのだろう。

 

この本にある現存天守のうち、私が実際に訪れたことがあるのは、犬山城(愛知県)、彦根城(滋賀県)、姫路城(兵庫県)、松江城(島根県)、丸亀城(香川県)の5つで半分も訪れていない。

 

中でも彦根城が好きで、ここ数年は、年に3度は訪れている。

四季のあるこの国で、空や草木の色、天守を包む風、天守へと登る時に滴る汗、石垣を這う蔦の色など、四季折々の城を味わうには、年に何度か訪れる必要があるのだ。

 

今度は、見た目の美しさだけではなくこの本を片手に歴史的な背景を確認しながら、天守を深く味わいたい。 

 

そしていつかは、すべての現存12天守を巡りたい。 

 

 

 

*オススメの新書あります

tetuneco.hatenablog.com

 

*私の好きなおすすめ彦根旅

tetuneco.hatenadiary.com

瞑想難民にならないために 瞑想する前の迷走中に読もう

悟らなくたって、いいじゃないか 普通の人のための仏教・瞑想入門

 

 

この本書いたのどんな人

この本は、魚川裕司さんと、プラユキ・ナラテボーさんのお二人による対談をまとめたものです。

 

魚川裕司

日本の仏教研究者、著述・翻訳家。東京大学文学部思想文化学科卒業(西洋哲学専攻)、同大学院人文社会系研究科博士課程満期退学(インド哲学仏教学専攻)。2009年末からミャンマーに渡航し、テーラワーダを中心とした仏教の行学(実践と学問)を学びつつ、仏教・価値・自由などをテーマとした研究を進める。仏教徒を自称しておらず、自身がいわゆる「仏教徒」であるとの自覚はないとしている。

(https://ja.wikipedia.org/wiki/魚川祐司より)

 

プラユキ・ナラテボー

上座部仏教の日本人僧侶

タイで出家し副住職を務める、近年は日本での瞑想指導も行なっておられる。

 

 

内容

 全編にわたり、お二人が瞑想を巡って、議論を交わす対談集。

 

一人は、東大を卒業し仏教を研究しておられ、もう一人は、タイで出家して修行も積まれたお方、お二人ともとても普通の人とはかけ離れた存在だ。

 

タイトルには、「普通の人のための」とあるが、ここにいう「普通」は、ある程度仏教に理解のある方を指しているように思う。

確かに瞑想や悟りについて書かれてはいるのだが。入門書というには、専門用語が多用されており、その門は狭いと感じた。

 

内容をまとめようにも、私には多くは理解できなかった。

ただ、仏教の難しいことはわからないままに、お二人の世界観をなんとなく読み取って、感じるための本かなと。

 

私の感想

私は、どんなものなのかよくわからないままに、瞑想に耽りたかった。

家の近くで瞑想会をやっているという寺院も見つけた。

そんな折、悟らなくてもよく、普通の人のための瞑想の入門とあって、この本に飛びついた。

 

しかしこの本は、私に瞑想を与えてはくれなかった。

そして、いい意味で、私の瞑想にすがる思いを打ち砕いた。 ただ単に、私が普通以下だったというだけのなのだろうが。

 

お二人曰く

「瞑想の技術において優れているということが、人格的に優れていることと直接的にはつながっていない」

んだそうだ。

 

なるほど。

瞑想は、私に悟りを与え、私を覆うあらゆる混沌を消し去る消しゴムでもない。

瞑想とは、私に戻るという感じであって、私を育てるものではないのかなと、私はそんなふうに解釈した。

 

この解釈は、全然違う見当違いなのかもしれない。あっているのかどうかすらわからない。

そもそも、なんでもすぐに理解でき、瞑想すれば悟りが得られると短絡的に考えること自体が間違っているのだろう。

 

この本は、瞑想へのアプローチが少し見えた本だった。

 

 

* 謎な新書あります

 

tetuneco.hatenablog.com

 

犯人たちよ、福家警部補に隙を与えてはいけない

福家警部補の再訪 大倉崇裕(創元推理文庫) 

 

 

この本書いたのどんな人

 この本を書いた人は、

会社勤務を経て1997年、「三人目の幽霊」で第4回創元推理短編賞佳作を受賞。1998年「ツール&ストール」で小説推理新人賞を受賞(応募時の筆名は円谷夏樹)。

2001年、『三人目の幽霊』でデビュー。 特撮、フィギュアなどにも造詣が深く、これらを題材にした作品も発表している。また、『ウルトラマンマックス』の第7話の脚本や、『刑事コロンボ殺しの序曲』『刑事コロンボ 死の引受人』などの翻訳(ノベライズ)も手掛けている。

 (https://ja.wikipedia.org/wiki/大倉崇裕 より)

 

このほか、名探偵コナンの脚本を手掛けておられます。

子供から大人までが、トリックを理解し、楽しむことのできる作品を書かれる方なのかなと思います。

 

内容

主人公は、捜査一課の警部補、警察官です。それも、女性で、やや間抜けな感じの、おっとり系キャラクターです。

主人公の彼女には、拳銃はおろか、殴り合いとか、取っ組み合いもありません。非暴力です。

 彼女にあるのは、事実の積み重ねと小さなひらめきです。

 私は、この本を読んで刑事コロンボや古畑任三郎を思い起こしました。

主人公のユーモラスな姿と、犯人を追い詰めていくしつこさが共通していると思います。

 

この本では、ストーリーは、まず犯人が罪を犯すところから始まります。読み手は、犯人がわかった上で、福家警部補がジリジリと犯人に迫っていくところを楽しむ趣向です。

 

私の感想

テレビでたまたま、スポーツ番組も見かけることがあると、私は、不思議と負けている方を応援したくなる。

 

そのせいか、私は、犯人が先にわかってしまうと、不思議と犯人側の立場に立って、物語を読んでしまう。

罪を償うべき犯人を応援するわけではないけれど、犯人の重くのしかかる罪悪感や後悔の念に押しつぶされそうになる姿に、自分自身を重ねてしまい、私は犯人とともに、福家警部補の執拗な操作に耐え、今バレるか、いつバレるのかと、息の詰まる思いを味わうのだ。

彼女の姿には、腹の底から苛立ちすら覚える。

 

そうして最後には、福家警部補に最後の一手を突きつけられて、犯人は観念する。

私も、やっとホッとして本を閉じる。

 

 

 *おすすめのミステリーあります

tetuneco.hatenablog.com

 

 

映画監督西川美和さんの頭の中をのぞいてみよう

 映画にまつわるXについて 西川美和 (実業之日本社) 

 

この本書いたのどんな人

この本の著者は、映画監督西川美和さんだ。
私は、邦画洋画問わず映画をほとんど見ないので、著者のことは、知らなかった。
調べてみたら「永い言い訳」 という作品では、物語の原作を書き、自ら映画の監督もされたそうで、映画公開の頃に書かれたインタビュー記事がありました。
こちら↓
著者のお顔も拝見できました。意志の強そうな感じのお方です。
  
 

 内容

この本は何?と言われたら、エッセイだと答えるしかないだろう。
でもどうも、エッセイとは違う感じがする。
 
なんというか、私の思うエッセイというのは、自分の目をに映る世界と、自分の中に起こる変化を文章にしたものという感じがするのだが、著者の文章を読んでいると、自分自身を客観的に映像化したものを文章化したようなものであるように感じた。
 
著者は、
十代のころは「思考」や「言葉」を本の中に求めたが、映画の仕事をするようになってからは、無意識に「映画になりそうな材料」を探して本に向かうようになった。
と書いている。
 
この本からも、文字が思考を追うよりも、映像を立ち上がらせるように読んだ方が、楽しいかもしれない。
 
 

私の感想

映画を作っている人というのは、きっと、頭の中に映像だけではなく、音や匂いも、細部にわたって、客観的に感じながら文章を書けるのだろうと思う。
それには、たくさんの言葉も必要だ。
 
彼女は巧みに言葉を並べて、彼女の感じていることを言葉にして表現して見せてくれるのだが、この本を読んで、読み手の方で言葉を理解して、著者の意図を汲み取り映像を立ち上げるには、読み手の力が問われる。
 
この本を読んでいると、そんな感じがしてくる。
 
著者の映画は見たことがないけれど、観てみようかな。
 
著者の描く登場人物たちが、どんな風景の中で、どんな言葉を話しているのか、聞いてみたいと思うのだ。 
 
先に著者の各物語を読んだ方がいいかな。
私の描いた映像とどう違うのかを感じてみるのも楽しいだろう。

 

*おすすめのエッセイあります

tetuneco.hatenablog.com

 

首都は生まれ変わる あなたにもきっと新しい首都が見える

首都崩壊 高嶋哲夫 (幻冬舎) 

 

この本書いたのどんな人

この本を書いたのは、日本原子力研究員を務めた経験を持つ小説家さんです。 研究員を務めた後は、学習塾も経営していたそうです。

そんな経歴でありながら、作家としてデビューし、数々の賞を受賞されています。

1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞し、本格的に作家デビューする、『風をつかまえて』が第56回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高等学校の部)に選定された。

高嶋哲夫 - Wikipediaより)

 

作品の多くは、理系の作家らしい科学的考察を駆使されたものであり、読み進めていくうちに、著者の描く世界が現実の世界と混同してしまうほどです。

 

とはいえ、著者のオフィシャルページを覗いてみたら、なんだか柔らかな印象の記事を書いておられた。

理系男子にも色々なタイプがおられるようです。

詳しくはこちらを↓

takashimatetsuo.jimdo.com

 

 

内容

ことは、地震予知から始まる。

主人公の国土交通省キャリア官僚である彼は、東都大学地震研究所員の友人から、マグニチュード8クラスの東京直下型地震が大幅に早く発生する予測データを示していることを聞かされたのだ。

大統領特使となったアメリカ留学時代の親友からは、東京直下型地震が端を発し、世界恐慌を引き起こすレポートを見せられる。

この世界恐慌に乗じて、儲けを企むヘッジファンドも動き出している。

主人公は、各省庁から集められたエリートとともに、日本政府の危機を回避するべく手段を模索していく。

その手段として持ち出されたのが、主人公が留学中に書いたという首都移転の論文だった。 

 

私の感想 

「首都崩壊」というタイトルと、日本地図の表紙を見ていると、首都東京がガラガラと崩れていくようなイメージが湧いてくる。

 

ところが、この本は、そんなパニック系の物語ではない。

 

この本は、非常にスマートな物語だ。

頭の切れる官僚たち、頭の切れる人にはやはり頭の切れる友人や官僚仲間、科学者がいて、たくさんの人々の頭脳や知識に、野望溢れる政治家や素晴らしい才能の建築家が繋がっていく。

 

精巧に組み上げられたパズルのように、登場人物のそれぞれが役割を果たし、美しい首都を作り上げていく。

 

ラストには、読み手それぞれの理想の新首都が目の前に広がるような感覚を味わうことができるだろう。

 

その美しさ故に、物語全体が、上手く出来すぎているという気がしないでもない。

その辺りは、理系男子である著者の論理的思考の結果なのかもしれない。

あるいは、日本の未来について、著者が示す一つの希望なのかもしれないと思う。

 

 

 *おすすめの本リストあります

tetuneco.hatenablog.com