米原万里の「愛の法則」 米原万里(集英社新書)
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著者は、ロシア語同時通訳であり、エッセイスト・ノンフィクション作家・小説家です。
この著者の書いた本に、「不実な美女か貞淑な醜女か」なんてタイトルがあるように、歯に着せぬ物言いで、痛快な文章を書かれる方です。
著者は、教育テレビ『ロシア語会話』で講師もされていたそうです。見ることができなかったことがとっても悔やまれます。
この本は、著者の講演の4つをまとめたものです。
演題は、「愛の法則」、「国際化とグローバリゼーションのあいだ」、「理解と誤解のあいだ」、「通訳と翻訳の違い」であり、著者の海外経験、通訳者としての経験と得意の男と女の事情を存分に披露しておられます。
タイトルの「愛の法則」は、その講演の一つであり、なんと、石川県の公立高校で、「高校生のための文化講演会」として行われたものだというから驚きです。
「愛の法則」では、著者の恋愛観というか、女性観が語られていますが、著者は、中学生後半から本を読んで、「愛の法則」について、研究したそうです。
ところが、世界的名作の主人公は男で、
男たちの恋愛対象となる、ロマンチックな感情の対象となる女というのは、みんな若い美女って決まっているんです。
若いブスも若くない人も対象にならない。すごく狭いのです。
と著者は言います。
そりゃそうだと思いつつ、こういう本当のことを、高校生に向かって言うって、なかなかツワモノだなと、感心することしきりです。
ファンなら、これでこそ米原万里さんだと、待ち構えていたことでしょう。
とはいえ、著者は、男性と女性のどちらがどうとか、こうあるべきであるとか、押し付けるでもなく、ズバズバと自身の見解を述べていきます。
女性にばっかり味方しないのも、著者の魅力ですよね。
それにしても、もう著者がお亡くなりになられていることが、残念でなりません。
著者の本がある限り、時々彼女の著書を読むことで、彼女には会えるのだけど、この本を読むと、語り口調の本文から、講演している彼女が浮かんできて、悔しいやら悲しいやら、いろんな気持ちがこみ上げてきます。
そうだ。私も著者に負けずに「愛の法則」を探してみよう。
もちろん私も、本からだけど。