下り坂をそろそろと下る 平田オリザ(講談社現在新書)
この本書いたのどんな人
この本を書いたのは、
平田 オリザ(ひらた オリザ)、男性、日本劇作家、演出家
です。
演劇に詳しくない私にとっては、誰だろこの人的な感じなのですが、この本にもあるとおり、演劇を通じて、地方の再生や、子供のコミュニケーション力発達に力を注ぐなど、広く活躍しておられます。
著者のホームページはこちら↓優しそうなお顔ですねー。
内容
なんというか、この本は不思議な本だ。
社会学者でも経済学者でも、教育者でもない、劇作家、演出家である著者が、社会を見つめ、社会や教育の再生を訴えかけている。
それがこう、社会学者などが専門用語を使って語るものとは違って、柔らかい言葉遣いでありながら、ズバッと社会を表現していきます。
例えばこんなふうに。
私たちはおそらく、いま、先を急ぐのではなく、ここに踏みとどまって、三つの種類の寂しさを、がっきと受け止め、受け入れなければならないのだと私は思っています。
一つは、日本は、もはや工業立国ではないということ
もう一つは、もはやこの国は、成長せず、長い後退戦を戦っていかなければならないのだということ。
そして最後の一つは、日本という国は、もはやアジア唯一の先進国ではないということ。
この本は、人の心の動き、社会の流れなどをつぶさに捉え、切り取り、舞台へと仕上げていく演出家ならではの視点で、言いたいことを言いたいように、私たちの進むべき道を描いている本だと思います。
私の感想
日本は、上へ上へと、さらなる発展を求めて、これまで頑張ってきた。
しかし、今はどうだろう。
顔を上げて、高みに登ろうと足に力を込めているようでいて、ただ、下り坂に足を踏ん張りつつ歩いているだけかもしれない。
ゆっくりと降り、高望みしない安定的な社会へと変わるときがきている。
きっとこのことは、若い人たちの方が、過去の思い込みにとらわれない分、よくわかることなのかもしれない。
何かのテレビ番組で、階段を登るより、降るほうが、筋肉痛になりやすいんだそうだ。
降るのは楽なようでいて、登るより筋力を必要とし、体力を奪うということなのだろう。
私たちも、ゆっくりと降りつつ、体力の限界にも耐えねばならない。
その先には、穏やかで平坦な社会が待っているといいのだけれど、そうはいかないのかも。
いつまで下ればいいのだろう。
ゆっくりと下りつつ、新しい「この国のかたち」に、そっと着地できればいいのにと思う。
下り坂をそろそろと下る 平田オリザ(講談社現在新書)
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