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本を読んで社会をのぞき見

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いつもの東京が違って見える 異国トーキョー漂流記 

異国トーキョー漂流記 高野秀行(集英社文庫) 

 

この本書いたのどんな人 

 この本を書いたのは、辺境の旅人?といいますか、UMA(未確認動物)を追うノンフィクション作家さんです。

早稲田大学の探検部から始まって、著者の旅の様子は、ノンフィクション作品として、たくさんのおもしろ旅が出版されています。

その行き先は、コンゴにミャンマー、ブータンやアフリカにインド、旅だけではなく、サハラ砂漠を走るマラソン大会に出場されたりしています。

なんといいますか、いろんな意味で目が離せないノンフィクション作家さんです。 

 

内容

この本は、珍しく東京が舞台です。

東京に暮らす外国人、東京で出会った外国人と高野さんとの交流の記録が綴られています。一方で、外国人を通して見る、いつもとトーキョーという街も描いていきます。

いつもの旅の記録とは違っていて、ちょっとエッセイっぽい感じです。

 

登場する外国人も、フランス、コンゴ、スペイン、ペルー、中国、イラクと幅広い。

そして、この本で忘れられないのは、盲目のスーダン人です。

どの国のどの人も、著者の目を通して、思考の偏りなく、曇りのない素直な目線で描かれています。

 

私の感想

 いつもは主に辺境の地に飛び出している高野さんだが、この本は、タイトルにあるように、東京が舞台だ。
いつものハチャメチャな冒険によるハラハラ感はないけれど、私はこの本が好きだ。
 
辺境の地など訪れたことのない私にとっては、辺境の地に思いを馳せたり、共感したりすることができない。それに、言い難いことなのだが、単に無謀な冒険のロマンの本質は、女の私には理解できないとも思える。
 
この本では、東京を舞台にしたことで、高野さんの人柄のようなものをより知ることができたし、なんとなく心に染みた。
 
この本で初めて知ったのだが、著者は、実は名門早稲田大学にたどり着くまでは、子供の頃から「まじめだ」「おとなしい」「協調性がある」などといわれて、優等生路線を歩んでおられたそうだ。日本社会にバッチリ順応てしまうことを恐れて、やりたいようにやることにしたそうだ。
これは心底意外だった。
 
この本を読んで、著者の冒険心を笑ってはいけないと思った。
著者は、真面目に真面目に、どんな土地にも素晴らしい協調性を持って、旅しているのだ。多分きっと、めちゃくちゃいい人なんだろう。
 
この本は、世界を転々し記録した数々の高野作品と高野さん、そして日本をつなぐ架け橋のような作品であり、高野ファンには外せない作品だと思う。
 

 

 

*私の好きな「高野秀行」おすすめ

tetuneco.hatenablog.com

 

ことばの教養を身につけたいあなたへ

ことばの教養 外山滋比呂(中公文庫)

 

この本書いたのどんな人

 この本を書いたのは、

お茶の水女子大学名誉教授、日本の英文学者、言語学者、評論家、エッセイス。文学博士である。全日本家庭教育研究会元総裁。

外山滋比古 - Wikipedia

 

東大・京大で1番読まれている本『思考の整理学』 ↓を書いた方です。

思考の整理学 (ちくま文庫)

こちらの本を読んだことのある方は多いのではないでしょうか。

 

 

内容

この本には、ことばをテーマに著者の考えがちらばめられている。 

 心を伝えるための言葉使い、手紙の言葉選び。

そして、読書の楽しみや読書のヒントについても、著者ならではの考えが述べられている。

著者曰く、

本を読めば、読むに値する本を読めば、頭の中がかき廻される。あとは、少し休んでやる必要がある。濁った水が澄むのには時間がかかる。立て続けに本を読むのは、どうもあまり賢明ではなさそうである。

世にいう多読は、賢明ではないということか。

読書で得た知識は、自分の頭に落ち着かせる時間も必要ということなのだ。

 

そして、なんでも本を読めば良いというものではなく、

本に読まれるのではなく、賢い読者になるために、めいめい読書の哲学を持ちたい。 

という。

 

本よりほかに楽しみはないといった学者などが、しばしば人間としての魅力に欠けており、その原因が本に読まれたためだと思われる時など思われるときなど、つくづく読書が呪わしくなる。われわれの目は文字など読むためについているのではないと考えたりする。わけもわからず本を読め、勉強しろというのは、成り上がりの者のせりふではないか。誰かが読書は高尚であると言い出すと、猫も杓子も履歴書に趣味は読書と書き入れる。世も末である。

著者は辛口なのである。そしてそれが読んでいて楽しい。

 

私の感想

話すにしても、文章を書くにしても、少しでも厚みがあり、豊かな表現ができるといいなと思っているけれど、なかなかそうはいかない。

 

 著者によれば、ことばの教養を身につけるためには、単に本を読めば良いということではないらしい。

良い本を読み、それを自分のものとして使うことが必要だ。

 

さてまあ、わかってはいるものの、その良い本を選び、自分のものとすることが、とにかく難しい。

そんなときの助けになるのが、著者の本だ。

 

好みもあると思うが、著者の適切な言葉選びと、ちょっと古めかしい言い回しは、私の身につけたいことばの教養だ。

 

 この本を読んで、ますます豊かな日本語を身につけたいという思いを強くした。

  

ことばの教養 外山滋比呂(中公文庫)

 

*文章力を鍛えるなら、この本

tetuneco.hatenablog.com

 

あなたは何を書く? 書いて生きるあなたのために

書くことが思いつかない人のための文章教室 近藤勝重(幻冬舎新書) 

 

この本書いたのどんな人 

この本の著者は、 

毎日新聞専門編集委員。コラムニスト。

早稲田大学大学院政治学研究科のジャーナリズムコースに出講、「文章表現」を教えている。 

 

著者は、事実を正確に伝えるという新聞の世界で書く、まさに書くことのプロというべきお方なのだ。

文章術に関する本も多数書いておられて、私は同著の『必ず書ける「3つが基本」の文章術も読んでいて、参考にしています。

こちらです↓

必ず書ける「3つが基本」の文章術 (幻冬舎新書)

 

内容 

この本では、文章を書く上での基本的なルールや表現法を中心にまとめている。

 とりわけ、書くべきことが浮かばないとき、文章のもとになる体験をうまく引き出すための手立てや技法を実践的に習得することを願って書かれています。

 

頭のチャンネルをちょっと切り替える程度で題材が浮かんでくる文章術や、描写力がつき、気のきいた比喩が思いつく方法などもいろいろ紹介しています。

 というから、何かを書きたいという人には、心強い本だ。

 

この本は、課題やテーマを与えられて、何かしらの文書を書かなければならない人、エッセイやブログ、SNSなどに、自分の思いを文章にして誰かに届けたいけれど、何からどう書いていいのかわからない人、そして、いい文章を書きたい人にオススメの本です。

 

私の感想

何かを書きたいという思いは、年々強くなっている。

それは、私自身を表現したいという思いと強く重なる。

 

私の書きたいという思いとは裏腹に、スラスラと書けるはずもなく、そう簡単にはいかない。

 

例えば、「真夏」というタイトルで作文を書こうとする時、著者は、「思う」ことより、「思い出す」ことを書くべしという。

作文は「思い」の産物です。「思い出す」ことも「思い」の世界にあるものです。

 

何かを書こうとする時、ついつい「私はこう思う」と綴りたくなるものだ。しかし、胸中にある思いなど描写のしようがない。

一方、真夏と聞いて思い出される、立ち上る入道雲や、むせかえる室外機からの熱風、夕立後の涼やかな空気などを綴れば、読み手も情景を浮かべることができ、そこに漂う思いも共感しやすい文章となる。

 

著者曰く、

生への共感をはぐくむ大きな要素は、日々生きていく上での人と人、人と物、物と自然との関係性にあるんじゃなかろうかと。とりわけ大きいのは、愛する人、大切にしたい物、ありがたいなあと思える自然の存在だと。

そう考えると、文章というものも人や物や自然とのかかわり方をどう描くかであって、書いて伝えるということは、すなわちそれらの関係性がよくわかるように描かれていることだ、と改めて気づかされます。

 

私の思いに閉じこもり、独りよがりになることなく、思い出すことを綴っていこう。

長い人生を生きてきた。何か思い出すこともあるだろう。なんだか書けそうな気がしてきた。

そして、私と人、私と物、私と読み手をつなぐ文章を書いていきたい。

 

この本は、今後の私の文章に大きく影響を与える一冊となった。

 

 

 *文章術の本おすすめ11冊

tetuneco.hatenablog.com

 

Q&Aで解説 声のなんでも小事典

声のなんでも小事典 和田美代子

 

この本書いたのどんな人

 この本を書いたのは、声の専門家ではありません。

著者が、

ヒトの声にまつわるさまざまな疑問を専門家に聞き、Q&A形式で答えたのが本書です。

 

著者は、声の専門家ではないからこそできる、素朴な質問を重ねて、とことん調べてまとめます。

他にも、日本酒の科学という本を出版されています。 

日本酒の科学 水・米・麹の伝統の技 (ブルーバックス)

 

内容

この本では、ヒトの一生と声、発生のからくり、声の悩みと解消法、声を育てる

声のトラブルと病気の5つの章からなり、71の質問に答える。

その質問の中には、面白いものがあって、

赤ちゃんの泣き声が大きのはなぜですか

女子も声変わりはあるのですか

裏声は誰にでも出せる声ですか

音痴は治りますか

声を若返らせる方法はありますか 

 なんてのもある。

一つ一つの質問には、専門家が丁寧に答えてくれています。

この本を読めば、声に関して知りたかったことや、思わぬ声の不思議を知ることができます。

 

 

私の感想

以前、とある本で、声が出ることと、話せることは別だと知って以来、声を出すということと、話すことの関係を大切に考えてきた。

 

話すということは、声には喉から音を出すというだけではなく、言葉や感情を乗せて、相手に声を届けることだ。

 

このところ、声を出すのが苦痛になって、人と話すのが億劫になってきた。 

病院へも行ったけど、仕方ないことのようで、治療することもなく、そのままになっていた。

それでも、声は出るもんだとたかをくくっていた。

 

元はというと、声帯は、声を出すために発生、進化した器官ではなく、食べ物を飲み込むことを安全かつ確実に行うための弁でした。

声帯は、肺から出た息によって振動し、呼吸流の断続音が咽頭、口腔、鼻腔を通り、舌、唇、顎、歯、頬などで声に変化を加えることによって、さらにいろいろな声が作られるのです。

 複雑な仕組みの中で作られる声は、どこか一つの器官に不具合でも、今の私の声は違ったものになってしまう。

 

言葉や感情を伝える手段の一つとして、大切な声を、今と変わらず誰かに届けるためには、声に関わる器官を大切に使っていきたいと思う。

 

 

 

*おすすめの「ブルーバックス」たち 

tetuneco.hatenablog.com

 

 

 *おすすめの新書あります

tetuneco.hatenablog.com

 

人間はどこまで耐えられるのか あなたはどこまで

人間はどこまで耐えられるのか フランセス アッシュクロフト(河出文庫)

 

内容

この本は、

極限の環境における人間の生理学的な反応を説明しながら、人間が生き延びる限界を探る。

ものであり、章は6つ。

 

どのくらい高く登れるのか

どのくらい深く登れるのか

どのくらいの暑さに耐えられるのか

どのくらいの寒さに耐えられるのか

どのくらい早く走れるのか

宇宙では生きていけるのか

 

この本は、それぞれその限界に挑んだ人々の功績とともに、それぞれの環境が人間に与える影響を解説し、人間の限界はどこなのかを示していく「生理学」を基本とする本だ。

 

著者曰く

本書を読めばわかるように、生理学は研究室の中だけでなく、日常生活に当てはまる科学でもある。極限状態と戦って生きのびるためには、「命の理論」である生理学の知識が欠かせないのだ。

 

とのこと。

「生理学」を通して、人間という動物の姿を、この本は見せてくれる。

  

私の感想

この本は、タイトルもさることながら、圧倒的な表紙のインパクトに引き寄せられるようにして購入した本だ。

 表紙には、氷に包まれ、炎にも耐え、山の頂を目指す?過酷な姿が描かれているが、なんだかどこか滑稽でもある。

 

地球上で一番高いところを目指す冒険家たちの体に起こる変化とは。

海の奥深い底の底を見たいという科学者たちの挑戦。

地球上の驚くべき環境下に暮らす人々の生活。寒さ、暑さへの対処。

人が早く走るためには、一体何が必要なのか。

地球を飛び出して、安全な方法で宇宙へ行って、帰ってくるための科学技術。

 

この本は、極限状態の人間の姿には、どうしてそんなところに?という疑問や、どうしてそこまでする?という好疑問や好奇心を、確実に満たしてくれる。 

 

それにしても、この本で、これらの人間の限界に挑むのは、探究心溢れる科学者、危険を厭わない冒険家、戦争下において極限状態に置かれた人々がほとんどだ。

人間というのは、極限状態という生死の境目にまで挑戦しなかればいられない動物なんだなぁと、つくづく感心するやら、呆れるやら。

 

人間の好奇心に限界などないことからすれば、この先、科学技術が進んで、ますます人間の限界は広がるだろう。

いつか続編が出版されるのを楽しみにしたい。 

 

 

 *おすすめの新書あります

tetuneco.hatenablog.com