食通しつたかぶり 丸谷才一
この本は、昭和47年10月号から文藝春秋に掲載されたうまいものに目がないという著者が、全国各地のおいしいものをただただ食べそれを書き記した16編の食紀行をまとめたものです。
おいしいと聞いては各地を回る著者ですが、毎回、その土地に関わる著者の友人知人が登場します。
第1話は、小説家の野坂昭如さんの育った神戸へ、第2話は文芸評論家の山本健吉さんの故郷長崎へ、第3話は、小説家のきだみのるに推薦状をもらい信濃へといった具合です。
そうして、著者 ー 土地 ー 食べ物 ー 人とがつながり一体となって、ますますその食べ物への親しみが湧いていくようです。
また、この本は、私の好きな歴史的仮名遣いによって書かれています。
好きですが不慣れなので、早く読めません。ですが、そこがまたいいと思っています。
馬刺しを食べた著者の描写を引用しますと
この何やら艶な趣のある赤黒い肉片を生姜醤油にちよいとひたしてから口にすると、まづひいやりとした感触が快いし、柔かくておだやかでほのかに甘い味はひが舌を包み、二三度、口を動かすともうそれだけで、さながら川の流れに舞い落ちた牡丹雪のやうに溶けてゆく。
とまあこんな感じで、馬刺し一切れでこの描写、詩でしょうか。
どうかこの本を読んで、美味しくて美しい日本の旅を著者とともに楽しんでください。
私は、花より団子で、とにかく1話1話、何か食べたくなって仕方がなくなって困りましたけど。
検索したらありました。いい曲です。
食通しつたかぶり 丸谷才一