もの食う人びと 辺見庸 (角川文庫)
人間は、食べたものでできているという。
当たり前だ。
私は、毎日繰り返す、食うことについて、
食が自分を作り、生きているから食べ、
食べているから生きているとは思いもしない。
そんな風に思って食べたことはない。
私にとって、食は、
生まれてからずっと続けている習慣の一つにすぎない。
なんというか、朝だから食べ、
昼になったといっては食べ、夜になるとまた食べる。
誰かが決めた一日三回の食事を疑いなくとっているだけなのだ。
この本に登場する「もの食う人びと」は、
生きている。
それは、おそらく著者が、
食うことを通して、人びとの生きている姿、ありのまま捉えており、
そこに食うことと生きることの強い結びつきを感じさせるからだろう。
食べることは生きることと思えば、
食べることを粗末には扱えない。
そう思えば、
私は、大切に感謝して、食べ、大切に感謝して、生きる。
そのとき、私は何を食べるだろう。
ファストフードは、しばらく食べたくないな。
そんな気にさせる本だ。
食べろ、そして、生きろ
著者のそんな声が聞こえた気がした。
偽善を嫌い、本当のことをただ知りたい人に勧めたい本だ。