dokusyo

本を読んで社会をのぞき見

読書記録・本のおすすめ・その他もろもろ

『人が人を裁くということ』小坂井敏晶

人が人を裁くということ (岩波新書)

人が人を裁くということ (岩波新書)

私はこれまで、

人が人を裁くということは、どういうことなのかということを、

ちゃんと考えたことがなかった。



ところが、そんな、何の気なしにこの本を手に取った私に、

とんでもない答えを与えることになる。

いや、答えではない、更なる問いという方が正しいだろう。



この本では、まずはじめに、

裁判員制度をめぐる問題から裁判という制度そのものを、

世界の制度と比較しつつ解説する。

そして、人が人を裁くことにより生ずる冤罪についても、

丁寧に検討していく。

この辺りまでは、まあよい。


最後に、「原罪としての裁き」として、

そもそも私たちが罪と呼んでいるものは何なのか、

私たちが、裁いていると思っているものは何なのか、

を深く深く考えていく。


それはもうあまりに深すぎて、もうほとんど禅問答のようなところまで到達してしまう。



私は、この本を読んで、

私たちが「罪人を裁く」と考えていることは、

社会の軋轢が噴出した、犯罪の行為者を見せしめにするということなんだと、

少なくとも、そういう一面があるということを私は知った。


この本が問いかけることは、ほんとのところどうなのかよくわからないが、

この本は、裁判について、私に新たな視点を与えてくれたことは確かだ。

いや、裁判だけじゃなく、

犯罪はなくならず、そして、それを裁き続ける人間についても、

新たな視点を与えてくれた。


↓同じく裁判について新たな視点を与えてくれた本↓

http://d.hatena.ne.jp/tetuneco/20090502