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『日本の失敗』松本権一

日本の失敗―「第二の開国」と「大東亜戦争」 (岩波現代文庫)

日本の失敗―「第二の開国」と「大東亜戦争」 (岩波現代文庫)

この本は、『戦争 東洋新聞』に、1996年5月から98年7月にわたって、

「昭和史話」の名のもとに書かれたものである。

現在が「第三の開国」にあたることは、わたしがつとに語ってきたことである。
その時期に、わたしは「第一の開国」がどのようにおこなわれ成功したかを
幕末史話として物語ったのだった(『開国のかたち』毎日新聞社)。
これに対して、大東亜戦争当時の「第二の開国」がどのように開かれていったのかを
史話として物語ろうとするのが、ここでのもくろみといっていいだろう。


折しも、大河ドラマのおかげで、右も左も龍馬、龍馬、龍馬伝である。

このドラマ、ちょうど著者のいうところの「第一の開国」を舞台としたドラマである。


この「第一の開国」は、

確かに外部からの(国外からの)圧力によって、

開国を迫られたにしても、幕府自らがその体制を解体し、

新たな体制へと変わっていくことで開国を成し遂げた。



これに対して、「第二の開国」は、

無謀な戦争へと突入し、その無謀さを自ら気付き改めることもなし得ず、

敗戦によってもたらされた。


著者は、このことを失敗と受け止め、多くの文献を引用しながら、

なぜ日本は無残な戦争に突入し敗れたのかを丁寧にひも解いていく。



この失敗をこの国の人たちはどう受け継ぎ、どうとらえているのだろうか。

戦争はいやだとかつらいとか悲しいとか、

感情的なことばかりが語り継がれているように私は思う。


本当は、史実としての戦争も引き継がれているのだろうが、

感情ばかりが先走って、一人ひとりが、

学ぶべきことをしっかりと受け止めていないように思う。



今もどこかで戦争は行われている。

今や、戦争は、憎しみなどの感情の連鎖となって、終わりなどないかのようだ。


どうか、自らの国の明日を思うならば、

史実を学び、そこから感情的・感傷的国民感情を排し、

これまでの感情を断ち切って、むなしい殺し合いは終わりにしてほしい。