- 作者: 幸田文
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/11/29
- メディア: 文庫
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明治時代の終わりの東京下町に生まれた主人公、るつ子。
簡単にいうと、女の子がお嫁に行くまでのお話。
しかし、女の子というものは、そうは簡単にお嫁にはいかないものなのだ。
とくにるつ子は、上のお姉さん二人に振り回され、
お母さんの看病や地震に見舞われるなどし、不運だ。
そんな中、どんな時も彼女を包む「きもの」は、
彼女をきりりと包んだり、華やかに包んだりする。
二人のお姉さんも、母も祖母も、お友達も、父の愛人も、
登場する女は皆、その人を表すかのような
「きもの」にくるまれている。
どんなにくるんで隠しても、
その人の本質が、きものを通して、かえって顕わになるようだ。
読者が女性なら、この本に登場する女性の誰かに、
自分を重ねてしまうだろう。
主人公のるつちゃんなんて、気難しくって、まるで私だと思う。
けれど、私は父の愛人が最も好きだ。すっと私を重ねてみる。
いろんな生き方があっていいんだ、なんて開き直る。
楽しい。
女性には、楽しい本だと思う。たぶん。
私もいつか、自分の手で、きものを着てみたいなと思う。
そのとき、私は背筋をしゃんとして、
凛とした涼やかな女でありたいと思う。