毒 船山信次 (PHPサイエンス・ワールド新書)
この本書いたのどんな人
この本を書いたのは、日本薬科大学の教授です。
現在、高等植物を中心に、その他、微生物由来の抗生物質など、天然物を起源とする有用な天然有機化合物の単離・精製、および化学構造の研究を行なっている。
特に有用な物質が多い「アルカロイド」と称される一群の天然有機化合物に着目する一方、「薬毒同源」の考えから、種々の植物由来の有毒成分を明らかにする研究も実施している。
サイトで、著者のお顔を拝見しましたが、毒に興味に持ち、研究をされているとは思えない優しげな恵比須顔でした。
内容
この本は、タイトルのとおり最初から最後まで、毒、毒、毒。
毒だらけです。
その取り扱い範囲も、植物、動物、細菌、環境ホルモン、麻薬などなどと、広く網羅しています。
毒、といっても、結局のところ、人間に悪い影響を与える化学物質を指していて、
著者は、
化学物質が理解できたら、毒の理解はより早くて確実である。
と述べています。
そんなわけで、この本では毒の解説と構造式が各所に散りばめられていて、科学の樹上を思い起こさせます。
この本では、薬と背中合わせの存在である毒にまつわる事故・事件の紹介もしていますが、単に興味本位に毒を語るものではなく、科学的な観点から検証・解説していきます。
私の感想
2時間ドラマファンの私にとっては、毒はミステリーの重要なアイテムの一つだ。
ドラマに出てくる毒は、青酸カリ、トリカブト、砒素、炭疽菌など、登場する毒の種類は様々だ。
その他、テレビのニュースで毒にまつわる事件・事故の報道もあるが、やっぱり毒は物語の中のものと同じで、私から遠い存在だ。
しかし、この本を読んでみると、毒は遠い存在ではなかった。
薬として使われていたものが、今となっては毒となっているもののあれば、その逆もある。毒にもなるが、薬にもなるものというものもある。
そして毒の科学は薬の科学であり、毒の歴史は、薬の歴史でもある。
毒は、私たちにとって、実に身近な存在なのだ。
とはいえ、できれば毒にまつわる事件・事故とは、今後も遠い存在でありたい。
本当いうと、薬もそんなにお世話になりたくない。
私は、山でむやみにキノコを採って食べたりしないし、ハブや毒蜘蛛に噛まれるようなところへは行かない。人に恨みをかうようなことも、多分ない。
この本を読んで、科学的な目線で毒を楽しむくらいが、一般人にはいい距離感なのかなと思う。
私は、2時間ドラマの被害者のようにはならないのだ。
*雑学博士に送る7冊