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『大河の一滴』五木寛之

大河の一滴 (幻冬舎文庫)

大河の一滴 (幻冬舎文庫)

なかなか渋い装丁に、ありがたいタイトル。

もう読まずとも何かご利益にありつけそう。


そんなこの本、そっと開いてみると、

自分の生き方をみつめ、人間の生き方をみつめて、

淡々と、そして、切々と、

語り綴られている。

やっぱりやっぱり、ありがたーい本なのでした。


そして人間にはプラス思考というものも役に立つけれども、

ひょっとしたらマイナス思考とか、

あるいはネガティブ・シンキングとか、こういうものもすごく

大事なことではなかろうかと考えるようになってきました。

ぼくらは光と影の両方に生きているのです。

日と、そして夜と、その両方に生きている。

寒さと暑さのなかに生きている。

こういうふうに考えると、その片方だけで、

ひとつの車輪だけで走っていこうとする危険さを、

いまあらためて感じざるをえません。

光があれば影があり、プラスがあればマイナスがある。

生があれば必ず死がある。


今日、友人が一人職場を去った。

寂しいことだけど、彼女が選んだ決断を応援したいと思う。

明るく振る舞う彼女だったが、

明るくならなければ、私には残された力を振り絞っているように見えた。


暗い方ばかりに目を向けているのは、確かによくないけれど、

明るさに身を包んでしまうこともないのではないか、と思う。


歩きだした彼女は、不安がいっぱいだそうだが、

同じくらい希望もあることにも気付いてほしい。


そして、明るくなろうとしなくても、

ニコッと笑えばそれで、充分輝いていることも知っていてほしいと思う。