dokusyo

本を読んで社会をのぞき見

読書記録・本のおすすめ・その他もろもろ

鵺の正体、鬼の真実 もっと妖怪が好きになる

古生物学者、妖怪を掘るー鵺の正体、鬼の真実  荻野慎諧(NHK出版)

 

この本書いたのどんな人

 この本の著者は、古生物学者さんであり、正真正銘の科学者さんです。

古生物学者さんというのは、化石から、過去に生きていた生物の研究をされる方なんだそうです。ピラミッドなどの発掘研究をされている考古学とは全く別なんだそうな。

おおむね人類の歴史と関わりがあるのが考古学、ヒトと関係のないものがこ生物である。

のだそうだ。

なかでも、著者の専門は、肉食のほ乳類化石の研究だ。

この本からは、妖怪の類を、科学的な専門知識を振りかざして真っ向から否定することなく、古生物学者としての立場は保ちつつ、茶化さず真面目に検証してみようという、著者の温かな眼差しが感じられる。

 

内容

 この本では、

化石を発掘して観察し、その姿を想像するように、古文献を「掘る」ことで妖怪や怪異の正体に近づけるのではないか

という全く新しい視点から成り立っている。

妖怪がいるかいないか、という選択を迫るものではなく、妖怪の意味・解釈について、科学的に多様な選択肢を提供する。

対処となるのは、鬼、鵺(鵺)、一つ目妖怪、河童などなど、その姿に込められた意味を考えてみたり、科学的に検証してみたりする。

 

 

私の感想

この本では、妖怪とされた生物を、科学と妄想のどちらに寄り過ぎることなく、明確に否定も肯定も避け、様々な可能性を与えつつ、絶妙のバランスの元、配置している。
 
第1章の鬼の真実では、いきなり掴みの部分で引き込まれてしまった。
 
まず、鬼というと、どのような姿を思い浮かべるか、と問いかけ、挿絵でも鬼の姿を読者に見せる。そして、鬼という姿にとって、最も重要な要素としてツノをあげる。
その上で、
さてここで、ツノ付きの生物に共通しているおおきな特徴を、もうひとつ挙げてみたい。
それは、すべてが「植物食」という点だ。
どれも動物を狩って食べることがないことにも注目していただきたい。
と解説する。
 
ここで、なるほど!と頷かない読者はいないだろう。なるほどそうきたかと、この解説を読んで、ようし著者の見解を聞いてみようじゃないかと、思ったのは私だけじゃないはずだ。 
一つ目妖怪のナゾを解くあたりも、視点を変えれば、生物の理解も変わってくるところがとても楽しい。
このほか、様々な妖怪について、科学者としての解釈で存在を示そうと試みていく過程は、文系さんも、理系さんも、どちらの視点からも、とても楽しく読めると思う。  
 
著者は、博物館を楽しいものにするという活動もされているそうだ。
この本を読んで、そちらも合わせて応援したいと思った。 

 

 

 

 *生物に関するオススメ本あります

tetuneco.hatenablog.com

 

 

 *オススメの新書はこちらです

tetuneco.hatenablog.com

 

 

*雑学博士にオススメの本はこちらです

tetuneco.hatenablog.com