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資本主義という謎 謎は答えがないから謎なのだ 

資本主義という謎 「成長なき時代をどう生きるか」 水野和夫 大澤真幸

(NHK出版新書)

資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)

資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)

 

この本は、経済学者の水野和夫さんと社会学者の大沢真幸のお二人の対話形式により構成されており、このお二人が、延々資本主義について語ります。 

 

対話形式の本ですと、大抵、読み進めていくうちに、著者と本を読んでいる私が、その対話に参加するような感覚がしてくるのですが、この本は全く違いました。

 

対話形式とはいえ、とにかくお一人お一人の話が長い。

 

そのため、なんといいますか、ところどころ共有する部分や呼応する部分があるものの、基本的には、それぞれ違った分野の専門家のお二人ですので、対話という形式をとりつつも、1つのテーマについて、それぞれが交互に講義をしているような感じなのです。

 

そのため読んでいる私は、常に、どちらの専門家がどういう立場で何について語っておられるのか、お二人のお話の共有する部分、コアとなる部分、呼応している部分をしっかり整理・把握していく必要がありました。

 

 第1章のなぜ資本主義は普遍化したのか、第2章の国家と資本主義、第3章の長い21世紀と不可能性の時代あたりまでは、資本主義や国家の歴史的背景とともに、経済学、社会学の両面から語られており、正直なところ難しかったです。

 

第4章の成長なき資本主義は可能か、第5章の「見たいの他者」との幸福論からは、これまでの議論を踏まえて、推測して語る部分ですので、やや読みやすくなりました。

 

最後の方で「桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)」が題材となって、日本とアメリカの関係や、日本の置かれている現状が書かれていたりして、あ、こういう話もしてくれるのねと面白く読ませていただけました。

 

ちなみに、「桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)」は、部活ではキャプテンを務め、勉強もでき、可愛い彼女もいる主人公は桐島で、その桐島が部活をやめて学校にも来なくなり、彼女や友達、その友達の友達とか彼女とかが、えーどうして、あの桐島がってうろたえたり、目標や指針を失うようなお話らしいですが、

この桐島がアメリカ、桐島の彼女がイギリス・EU、日本はというと、桐島の彼女の友達くらいとのことでした。

アメリカというものが代表していた圧倒的な魅力、桐島的な魅力はもう失われつつあるのですから、実は、日本はすでに、「アメリカ、同盟やめるってよ」とか「アメリカ、覇権おりるってよ」という通達を受け取りつつあるような状況にある

なんか情けないけど、笑えますよね。 

 

 

さて、専門用語がバンバン入ったこの本、私には、難しい本でした。

しかし、資本主義についての経済学と社会学の両面から深く切り込んだ話を一冊に閉じ込め、うまく合体させており、そこからさらに未来へと議論を進めていける大変興味深い一冊でした。

良質でコストパフォーマンスに優れた本だと思います。 おすすめ!

資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)

資本主義という謎 「成長なき時代」をどう生きるか (NHK出版新書)