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死なないやつらがいる 科学的に哲学する 私好みの本

 死なないやつら 長沼毅(ブルーバックス)

「死なないやつら」だなんで、なんだか映画のタイトルのような本ですが、 この本は、生命とは何かを真剣に探る本なのです。

 

著者は、生物学を学ぶ中で、

やがて私は、自分が学びたかったのは具体的な物事を対象とした生物学ではなく、思索的でなかば哲学のような「生命学」だったのではないかという疑問にかられました。

と書いています。

 

まず、第1章で「生命とは何か」という問いそのものを考えます。「生命とは何か」とは何かを考えるのです。ちょっと哲学的ですが、面白い視点です。

 

「生命」の定義を考えた上で、いよいよ第2章で「死なないやつら」が登場です。

 地球上に存在する極限生物から、地球生命という現象がギリギリどこまで成立しうるのかを見ていくのです。

 

この本でいう極限生物とは、

超高温、超高圧、極度の乾燥、あるいは極度の塩分濃度など、私たち人間ならたちまち死んでしまう、「地獄」としか言いようのない極端な観光で生きている生物たちです。

 

例えば、クマムシは151℃の高温や、0.0075ケルビンという絶対零度近くにも耐え、放射線においても致死線量は5700シーベルト(人間の致死線量は5シーベルト)だそうです。

 

(クマムシに興味を持った方は、こちらのサイトがおすすめです↓)

horikawad.hatenadiary.com

 

 

この本では、クマムシのほかにも、乾燥に強い生物、海底火山に住む生物、現実の地球に存在しない圧力に耐える得る生物、無機物からエネルギーを作る生物などなど、私たち人間を生きていることの基本と捉えると信じられないような生物が紹介されています。

 

そして、なぜ、このような極限生物がこの地球上に存在するのか、進化や遺伝子というキーワードからも、生物が生きているということの不思議にも迫ります。

 

極限動物のそれぞれを登場人物とした生物ミステリーといった感じで、読んでいて楽しくなりました。

 

この本の最後には、宇宙にとって生物とは何かを考えます。

最後まで哲学的な要素たっぷりに生命を考えていくのです。宇宙の、そして生命の始まりにも迫ります。

 この最後の部分は、なかなか高度な世界観と理解力が必要ですが、じっくり読めば新しい生命感を得られることと思います。

 

 私自身、生物関連の本は結構好きで、色々と読んできましたが、その中でもこの本は、生命の不思議を奥行きを持って見せてくれた本でした。

 

 

 *おすすめ 新書リストはこちらです

tetuneco.hatenablog.com