シズコさん 佐野洋子 (新潮文庫)
佐野洋子さんというと、「100万回生きたねこ」の佐野さんである。
装丁の絵からして、なんとなく分かった人もいたかもしれない。
この本は、
佐野さんと母のシズコさんとの関係を振り返りつつ、
老いた母との今を淡々と綴るものである。
これほどまでに、物語でもないのに、しつこく「母を嫌う本」というのも、
なかなか珍しいのではないか、と思う。
というのも、この世の中、親を、特に母を嫌うということは、
なんとなく許されない風潮があるように思える。
だから、
ほとんどの人はそうは思っていても、誰も表立ってはっきりとは言わない。
なのに、
佐野さんときたら、はっきりと嫌いだと言葉にし、本にもした。
そのため、この本を読み進めていくと、
嫌いな母とのあれこれが、いろいろと綴られていて、
自然に、我が身を振り返り、わが母とのあれこれを思い出し、私たちの今をしみじみと見つめてしまい、
私は、非常に重苦しい気分に包まれてしまった。
途中で何度も、読むのが嫌になった。
ところが、である。それでもどんどん読んでいくと、次第に変わっていく、洋子さんとシズコさんに、
どんどん引き込まれていくのだ。
それはたぶん、最後の最後まで、親を大切にしようとか、感謝しようとか、
よくある恩着せがましいところがなくて、
私のような、親不孝者でも素直な気持ちで読めるところが、何より良かったのではないかと思う。
とにかく、この本は、洋子さんはシズコさんが好きだったし、
ああ好きでよかったね、と思える、
あったかい本だ。
*おすすめ本あります
tetuneco.hatenablog.com