『堕落論』坂口安吾
ずいぶん前になるが、あるとき、
「あの、○○さん(私)。 どん底からどうやって這い上がったんですか?」
と友人から聞かれた。
うーんと。なんですかね、その、私がどん底を経験したかのような前提は。。
とまあ、そこは気になったけど、まあ確かに、人それぞれ大なり小なり、山や谷はある訳で、んなのない人なんていないのであり、私が生きてきた中で、一番深い谷がどん底といえば、どん底なのかな。と優しく解釈。
「今、底にいるの?」と聞くと、「うん。」という。
「ほんとにそれ底?」と聞くと、「うーん。」という。
底なんて、過ぎ去って、より高いところに立って振り返り、ようやく、それが底であることが認識されるにすぎないのかな。と私は思うのです。
「とにかく、高い方へ、明るい方へ進めば?」
友人へは当たり前の回答をしておいた。
前置きが長くなりましたが・・・この本では、
高い方へ明るい方へばかり進むことを求めず、うーん、いや高い方へ明るい方へばかり進むことが生きることのすべてではない、というか。
落ちることもまた、自然なことというか。
そんな著者の生き方を綴っている。
著者曰く、
帰るということの中には、必ず、ふりかえる魔物がいる。
なのだそうだ。
この本で一番、心に引っかかった一文がこれだった。
今日も、家に帰る道々、我が自分勝手ぶりを振り返る。
そうして私は、低い方へと落ちてゆく、それはそれで、そういうもんなんだよね。