dokusyo

本を読んで社会をのぞき見

読書記録・本のおすすめ・その他もろもろ

「夜は短し歩けよ乙女」 朱き達磨の 褪せぬ間に 森見ワールド全開! 

夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦(角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

森見 登美彦 角川グループパブリッシング 2008-12-25
売り上げランキング : 1748
by ヨメレバ

馬鹿馬鹿しい本、数あれど、馬鹿馬鹿しくって、その上馬鹿みたいに暖かい本は、森見登美彦さんの本を置いて右に出るものはないでしょう。

 

 

この本は、とある大学生の男女が出会うハッピーエンドの恋物語です。彼と彼女が交互に入れ替わり、彼の目線と彼女の目線の双方から互いを描いています。

とはいえ、なかなか出会わない、見つからない、彼女の目に映らないで、もうじれったいったらない。

 

二人の恋には、シンデレラが継母やお姉さんにいじめられ、舞踏会に行けなかったり、白雪姫が毒の入ったリンごを食べさせられたり、親指姫で王子様がヒキガエルにされたり、そんな出会いの障害はありません。

 

あるのは、彼がただただ奥手なのです。いつまでも何やってんだよこのやろーなのです。

彼女はクラブの後輩であり、私がいわば一目惚れしあたのだが未だに親しく言葉をかわすことができずにいた。今宵はいわゆる一つの好機と思っていたが、彼女のそばに座れないという戦略的失敗によって私の目論見は水泡に帰しかけていた。

そして、話の中盤になってなお、

初めて言葉を交わしたあの日から、彼女は我が魂を鷲掴みにし、そのたぐいまれなる魅力は鴨川の源流のごとく滾々と湧き出して尽きることがない。かつて「左京区と上京区を合わせても並ぶものなき硬派」という勇名を馳せた私が、今やなんとか彼女の眼中に入ろうと七転八倒している。私はその苦闘を「ナカメ作戦」と名付けた。これは、「なるべく彼女の目にとまる作戦」を省略したものである。

この調子なのです。

その上、彼女がとにかく鈍い。鈍いにもほどがある。

「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」

そして彼女と出逢ってから、早くも半年の月日が流れたのである。 

 

すれ違う二人っていうか、距離感間違いすぎ!

そして、二人を取り巻く、助平ジジイの東堂さん、浴衣を着た天狗の樋口さん、底なしの麦酒飲みの羽貫さん、謎の金貸し李白さんなどなどの個性豊かなキャラクターたち。

そして、古式ゆかしき京都の街と、なぜか聞くと心躍る学園祭、そして、森見ワールドには欠かせない男一人の万年床。

 

もう森見ワールド全開!妄想万歳!!

 

読み終えると同時に、腹の底から「若いっていいねぇ」がぐっと込み上げることでしょう。おすすめです!!

 

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)


森見 登美彦 角川グループパブリッシング 2008-12-25
売り上げランキング : 1748
by ヨメレバ