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『誰か「戦前」を知らないか』山本夏彦

誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答 (文春新書)

誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答 (文春新書)


この本は、対話形式になっており、

大正4年生まれの著者が、聞き手とのやり取りの中で、

活動写真、牛鍋の時代、教科書、きもの、洋行など、

テーマにそって戦前を語るものである。


全編を通して、期待を裏切らない快活さで、とにかく渋い。

いつものことながら、

本の内容、戦前とはどういう時代だったのかということよりも、

私の興味は、著者自身へと移行していく。

人間は下手な魔法使いに似ています。
自分のかけた魔法にかかって、その自覚がありません
写真、映画、テレビを肯定するなら
そのピークにある原水爆も肯定しなければなりません。

中毒するからだよ。
日本人は皆テレビ中毒です。
それに社会派みたいにある考えを観客に押し付けるのはご免だ。
意見はたいてい浅薄です。

−  山本さんは寿司はなのがお好きですか。
山本 好きなものはありません。死ぬまでのひまつぶしに食べているんです。

・・でさえ、戦中戦後ひもじい思いをしたことがないということだけは許しません。
飢えた人は飢えなかった人を許さないのです。


戦前という時代を、著者の視点からちらりとのぞく。

何も知らない私にとって、なつかしくもないし、未練もない。

ただ、こういう時代、こういう日本人を経て、

今の日本が、自分があると思うと、それだけで嬉しい。