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死ぬ瞬間を客観的に見つめる 死生観を変える一冊


タイトルからすると、死のその瞬間を捉えた、まさに断末魔の叫びというかあえぎというか、そういうものを綴った本だと想像してしまうけれど、この本はそういう本ではない。

むしろ、サブタイトルとなっている「死とその過程について」という方が、この本の内容をよく表している。
この本は、死への過程とそれにともなう不安・恐怖・希望について学ぶべく、死が目前に迫った末期患者に対して、医師・病院牧師らがインタビューを行い、それを記録したものである。


著者は、はしがきにてこう語っている。

私の願いは、この本を読んだ人が「望みのない」病人から尻込みすることなく、

彼らに近づき、彼らが人生の最後の時間を過ごす手伝いができるようになることである。

そうしたことができるようになれば、その経験が病人だけでなく自分にとっても

有益になるうることがわかるだろうし、人間の心の働きについて多くを学ぶことができ、

自分たちの存在のどこが一番人間らしい側面であるかがわかるだろう。

そしてこの経験によって心はより豊かになり、

おそらくは自分の死に対する不安も少なくなるのではなかろうか。


この本を読んで思うことは、死にたくないということと、生きたいということは、全く違うということだ。


死が目前に迫り、病魔が刻々と身体を蝕んでいく中で、死にたくないという抵抗が、今やその望みを失い始めているとき、いつしかその抵抗をやめ、死は誰にでも訪れることを受け入れる。

しかし、生きたいという思いは残るのではないだろうか。
誰かの役に立ち、求められ、何かを残したい。

人間らしくありたい。そういう思いは残るのではないだろうか。
死のその時まで、私は生きているのだから。


死をやみくもに恐れず、冷静に見つめる。
そういう視点を、この本が私に与えてくれた。




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