- 作者: サン=テグジュペリ,堀口大学
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1955/04/12
- メディア: 文庫
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私は、飛行機が苦手だ。
空港の近くに住むようになって、ぐんと利用回数が増え、
機内でのドリンクサービスを楽しめるまでになったものの、
今でも、明日は飛行機に乗るという夜、
「明日死ぬかもしれんな。。」と必ず思う。
まあこれは、飛行機にかかわらずバイクでも車でもそうで、
ただ、私は小心者の心配性の死にたがりにすぎない。
この本を読んで初めて知ったのだが、
『星野王子さま』で有名な著者は、飛行機に乗ることを仕事にしていた。
航空隊に入り、除隊後、航空会社の路線パイロットとなり、
仲間や自分自身の危険に遭遇した。
私が思うような死とは違った、もっと肌で感じるような、
そんな死に多く出合ったことだろう。
それでも光輝く空に向かって、彼は飛び立つ。
この本は、そんな著者の職業飛行家としての15年間の経験を綴ったものである。
宮崎駿の装丁が表しているように、
どこか優しくなにやら淡い色どりを感じさせる本である。
人間というものは、どうやら、どんなことにも慣れるものらしい。
三十年後に死ぬかもしれないという考えは、
一人の人間の喜びを傷つけはしない。
三十年も、三日も、要するに遠近法上の問題にしかすぎない。
どうも私は、遠近法上の問題である死を、
ぐっと近くにまじまじと覗き込むようにして感じているようだ。
久しぶりに、本当に久しぶりに、バイクに乗ってみようかな。
高速道路をちょっとスピード出して走ってみようかな。
そうしたら、私も生きてることだけを楽しめるかな。