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『人間の土地』サン=テグジュペリ 堀口大學訳

人間の土地 (新潮文庫)

人間の土地 (新潮文庫)

私は、飛行機が苦手だ。

空港の近くに住むようになって、ぐんと利用回数が増え、

機内でのドリンクサービスを楽しめるまでになったものの、

今でも、明日は飛行機に乗るという夜、

「明日死ぬかもしれんな。。」と必ず思う。

まあこれは、飛行機にかかわらずバイクでも車でもそうで、

ただ、私は小心者の心配性の死にたがりにすぎない。


この本を読んで初めて知ったのだが、

『星野王子さま』で有名な著者は、飛行機に乗ることを仕事にしていた。

航空隊に入り、除隊後、航空会社の路線パイロットとなり、

仲間や自分自身の危険に遭遇した。

私が思うような死とは違った、もっと肌で感じるような、

そんな死に多く出合ったことだろう。


それでも光輝く空に向かって、彼は飛び立つ。



この本は、そんな著者の職業飛行家としての15年間の経験を綴ったものである。

宮崎駿の装丁が表しているように、

どこか優しくなにやら淡い色どりを感じさせる本である。

人間というものは、どうやら、どんなことにも慣れるものらしい。
三十年後に死ぬかもしれないという考えは、
一人の人間の喜びを傷つけはしない。
三十年も、三日も、要するに遠近法上の問題にしかすぎない。

どうも私は、遠近法上の問題である死を、

ぐっと近くにまじまじと覗き込むようにして感じているようだ。


久しぶりに、本当に久しぶりに、バイクに乗ってみようかな。

高速道路をちょっとスピード出して走ってみようかな。

そうしたら、私も生きてることだけを楽しめるかな。