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難解な本に挑む あなたのための指南書

難解な本を読む技術 高田明典(光文社新書)

 

 

この本書いたのどんな人

 この本を書いたのは、

現代思想、通信工学、メディア論が専門で、一般向けに多数の著書を著している。

高田明典 - Wikipediaより)

 

フェリス女学院大学文学部でコミュニケーション学科の教授をされているそうだが、彼の著作の見てみると、コミュニケーションから現代思想、歴史教科書に関する本もありました。

 

  

内容

この本は、タイトルのとおりズバリ難解な本を読む技術を解説する本です。

難解な本といってもそんじょそこらの難解さではなく、超がつくような難解な本を読むことを前提としています。

 

巻末に、代表的難解本が掲載されていますが、著者が選出したのは、デリダ、スピノザ、ウィトゲンシュタイン、ソシュール、フロイト、フーコー、ラカン、ドゥルーズ、ナンシー、ジジェクと、名だたる思想家ばかりです。

 

著者は、難解本を読み解く方法として、本一冊に読書ノートを1冊使って、メモを取りながら読み進めていく方法を勧めています。

それはそれは地道な地道な作業で、難解な本を簡単には読み解くことはできないことがよくわかります。

そして、この本は、読書ノートの書き方にとどまらず、著者の難解本を読むことの意義、読書とは何かを示してくれます。

 

名著を理解するということには、世界の見方やものの見方の劇的な変化が伴います。多くの人が生涯かけても絶対に到達できない地点に立って、この世界を見ることができるようになるわけですから、その意義は尋常なものではありません。

 

 実体験に比べれば読書は圧倒的に安価ですが、読書というのは決して「情報を受け取る」という受動的な営みなのではなく、そこに表現されている知識や思想を、自分の内部に取り込むという能動的な営みです。すなわち、読書という能動的な営みによって、私たちは知識や思想を自分の元することができます。

 

読書に対する新たな視点をこの本が与えてくれます。

 

私の感想

どんな本を読むかは、大変重要だ。

著者曰く、

私たちの時間は、限られています。「読むべきでない本」を読んでしまうことによる時間の損失は、私たちが思っている以上に甚大です。

それは、単にその本を読むのに要した時間だけではなく、その本の悪い影響から脱するために必要となる時間も含まれるからです。

とのこと。

 

とはいえ、読むべき本を見つけて、難解な本に挑もうにも、やはり足がすくんでしまう。闇雲に挑戦しても、歯が立たないのはわかっているのだ。

 

この本にあるように、読書ノートを脇に置き、一つ一つ言葉を丁寧に自分の中に落とし込むように、自分だけの読書ノートを完成させていくことで、深く難解本の奥へと分け入ることができそうだ。

 

ちょうど長く続けられる趣味を探していたところだ。

難解本を何年もかけて、繰り返しじっくり読み、歳を重ねるごとにさらなる高みへと理解を進めていくのもいいかもしれない。

 

 

 * おすすめの新書あります

tetuneco.hatenablog.com

 

タイムトラベル 今ここはマイナス・ゼロ

マイナス・ゼロ 広瀬正 (集英社文庫) 

 

 

この本書いたのどんな人

この本を書いたのは、

日本の小説家、SF作家、推理作家、ジャズ・サックス奏者、クラシックカーモデル製作者。時間をテーマにしたSF作品を多く残し、「時に憑かれた作家」とも呼ばれる。

 

調べてみたら、作品数がそんなになくて、なぜだろうと思っていたら、著者は、47歳という若さでこの世を去っておられた。

 

 

内容

この本は、「時に憑かれた作家」と呼ばれる所以とも思えるタイムマシンモチーフとした時間を題材としたSF作品です。

 

時間というと、過去から未来へと直線的なイメージで流れているように感じられる。

多くのタイムマシンが出てくる物語は、タイムマシンに乗って、直線的に未来へ行ったり、過去へ行ったりする。

 

しかしこの本の中では、時間が螺旋を描くように過去と未来が、タイムマシンによって奇妙につながっている。

 

この本は、時間に憑かれた著者だからこそ書けた作品だ。

 

私の感想 

あまり書くとネタバレになるのだけれど、この本には、わずかな登場人物しか登場していない。 

例えば、主人公の男。

物語の始まりゼロ地点の主人公、そして過去のマイナス地点の主人公、未来のプラス地点の主人公にと、そしてタイムマシンで到達した新たな時間のゼロ地点であるマイナス・ゼロ地点の主人公が登場する。

4人が絡み合い物語が構成されているが、同じ1人の男だ。

 

鈍い私は、この本の最後になって、このことに気がつかされるのだが、気付いた時には、物語の中の時間がぐるぐると渦を描いて、その渦に飲み込まれて、ぐらりとめまいがした。

しかもだ、えーっと、主人公が助けた彼女が、まさか・・・だなんて。

 

この本は、ドキドキでもワクワクでもない、クラクラするSFだ。 

 

 

 *おすすめの本あります!

tetuneco.hatenablog.com

 

語彙力を鍛えたいあなたへ 量と質を高めるヒントがここにある

語彙力を鍛える  量と質を高めるトレーニング 石黒圭(光文社新書)

 

この本書いたのどんな人 

この本を書いたのは、

日本の言語学者日本語学者。国立国語研究所教授、一橋大学大学院言語社会研究科連携教授。

 研究分野は文章論・読解研究・作文研究など。

石黒圭 - Wikipediaより)

 をしておられて、文章表現に関する本を多数書いておられます。

著者の研究室のサイトでは、

難しい文章を速く正確に読めるようになりたい。

頭にある思いや考えを的確に書けるようになりたい。

人の話に真剣に耳を傾けられるようになりたい。

人の心に届く話ができるようになりたい 。

そんな思いを持つ人を応援したいと考え、日々試行錯誤している日本語研究者のページです。

石黒圭研究室より)

 とありました。

 

内容

この本では、語彙とは何かから始まり、

語彙力 = 語彙の量(豊富な語彙知識)×語彙の質(精度の高い語彙運用)

として、

語彙の質を上げるには、基本的には、類義語、対義語、上位語・下位語などの言葉と言葉の関連や、語種・文字種・書き言葉・専門用語・方言などの言葉の種類、あとは文脈などから、言葉の種類を増やしていく必要がある。

そして、語彙の質を上げるには、言葉の使うべき時と場所と相手に合わせた言葉を、適切に選び出せるように訓練する必要がある。

 

この本では、そのための11の語彙の「量」を増やす方法、そして11の語彙の「質」を高める方法を解く。

 

私の感想

 人様に読んでいただくことを前提として、ブログを書いている以上は、恥ずかしくない語彙力で、文章を書いていきたい。

そのためには語彙の量も質も、私にはまだまだ足りない。 

 

以前、同著の『「接続詞」の技術』という本を読んで、文章を書くにおいて、とても参考にしていることもあって、「語彙力を鍛える」というタイトルを見てすぐさま、私が求めているのはこの本だ!とばかりに飛びついた。

 

『「接続詞」の技術』の感想はこちら↓

接続詞を制するものは、文章を制する ってね 

 

さてこの本、日本語研究の専門家によって、たくさんの例を示しつつ語彙力を鍛えるにはどうしたらいいのかということを、著者の語彙力を駆使して丁寧に解説していくものだ。

この本を読むだけで、豊富な語彙を感じ、日本語を楽しむことができる。

しかし、この本を読むには、それなりの語彙力が必要な気がする。

 

例えば、著者曰く、「オリンピック対策」という言葉があるが、「対策」とは深刻な問題が予想される場合に対する処置に使う言葉でありしっくりこないのだそうで、

しいて言うなら「オリンピック準備」くらいでしょうか。しかし、むしろここでは、「オリンピック活用策」「オリンピック振興戦略」のようの言葉のほうが、はっきり内容が伝わりそうです。

 とのこと。

この語彙選択の違いを、どっちでもいいと思うような、やや語彙力の低い人には、著者が言わんとするところが伝わらないと思った。

 

この本を読んで思うに、語彙力を鍛えるには、本や人から大量のインプットによる言葉の意味を感覚的に身に付けつつ、適切なアウトプットを繰り返していくしかないのだろう。 

 

*文章力をつけるためのおすすめ本あります 

tetuneco.hatenablog.com

 

脳が作り出す映像 夢を科学する 

夢の科学 ー そのとき脳は何をしているのか?(ブルーバックス)

私は、よく夢見る。

戦隊モノの主人公だったり、殺し屋に狙われてたり、宝くじが外れるというのもあった。

そうかと思えば先日は、バスに乗ってメキシコ国境を越えるところだった。

思い返すと、楽しい夢なんて見たことないような・・・。なぜだろう、と思う。


しかし、こういう夢にはこういう意味が・・・ってのを解明する本ではない。

あくまでも夢を科学する本、なのだ。



この本の著者は、夢を脳の働きとリンクさせて、まさに科学的に、とてもわかりやすく夢を解明しようとしています。

もともと脳科学に少々興味のある私としては、たまらん一冊でした。



詳しくは、この本を読んでいただきたいのですが、私のざくっとした理解では、

起きている私の見る世界も、寝ている私の見る夢の世界も同じ、私の脳がつくる世界なんだそうです。


夢を見ている間は、寝ている=脳の活動の外部へのアウトプットを遮断している状態であるのに、脳だけが活性化している状態(らしい、たぶん)で、あくまでも脳のなせる技なのだそう。


私は私が見る夢の世界で、スパイあり、戦争あり、せつない片思いありで、まるで映画みたいなストーリーで生きているのだ。

私の脳は、アクション映画かサスペンスドラマの監督なんじゃないかなと思う。

夢も現実も、どちらも生きている同じ私なんだなと、妙に実感した本でした。





*おすすめの新書あります
tetuneco.hatenablog.com


*おすすめのブルーバックス6冊
tetuneco.hatenablog.com

食べて生きる 人間の原点を鋭く見据える作品

もの食う人びと 辺見庸 (角川文庫)

人間は、食べたものでできているという。

当たり前だ。


私は、毎日繰り返す、食うことについて、

食が自分を作り、生きているから食べ、

食べているから生きているとは思いもしない。

そんな風に思って食べたことはない。



私にとって、食は、

生まれてからずっと続けている習慣の一つにすぎない。


なんというか、朝だから食べ、

昼になったといっては食べ、夜になるとまた食べる。

誰かが決めた一日三回の食事を疑いなくとっているだけなのだ。


この本に登場する「もの食う人びと」は、

生きている。

それは、おそらく著者が、

食うことを通して、人びとの生きている姿、ありのまま捉えており、

そこに食うことと生きることの強い結びつきを感じさせるからだろう。



食べることは生きることと思えば、

食べることを粗末には扱えない。

そう思えば、

私は、大切に感謝して、食べ、大切に感謝して、生きる。


そのとき、私は何を食べるだろう。



ファストフードは、しばらく食べたくないな。

そんな気にさせる本だ。


食べろ、そして、生きろ

著者のそんな声が聞こえた気がした。



偽善を嫌い、本当のことをただ知りたい人に勧めたい本だ。