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本を読んで社会をのぞき見

読書記録・本のおすすめ・その他もろもろ

脳が作り出す映像 夢を科学する 

夢の科学 ー そのとき脳は何をしているのか?(ブルーバックス)

私は、よく夢見る。

戦隊モノの主人公だったり、殺し屋に狙われてたり、宝くじが外れるというのもあった。

そうかと思えば先日は、バスに乗ってメキシコ国境を越えるところだった。

思い返すと、楽しい夢なんて見たことないような・・・。なぜだろう、と思う。


しかし、こういう夢にはこういう意味が・・・ってのを解明する本ではない。

あくまでも夢を科学する本、なのだ。



この本の著者は、夢を脳の働きとリンクさせて、まさに科学的に、とてもわかりやすく夢を解明しようとしています。

もともと脳科学に少々興味のある私としては、たまらん一冊でした。



詳しくは、この本を読んでいただきたいのですが、私のざくっとした理解では、

起きている私の見る世界も、寝ている私の見る夢の世界も同じ、私の脳がつくる世界なんだそうです。


夢を見ている間は、寝ている=脳の活動の外部へのアウトプットを遮断している状態であるのに、脳だけが活性化している状態(らしい、たぶん)で、あくまでも脳のなせる技なのだそう。


私は私が見る夢の世界で、スパイあり、戦争あり、せつない片思いありで、まるで映画みたいなストーリーで生きているのだ。

私の脳は、アクション映画かサスペンスドラマの監督なんじゃないかなと思う。

夢も現実も、どちらも生きている同じ私なんだなと、妙に実感した本でした。





*おすすめの新書あります
tetuneco.hatenablog.com


*おすすめのブルーバックス6冊
tetuneco.hatenablog.com

食べて生きる 人間の原点を鋭く見据える作品

もの食う人びと 辺見庸 (角川文庫)

人間は、食べたものでできているという。

当たり前だ。


私は、毎日繰り返す、食うことについて、

食が自分を作り、生きているから食べ、

食べているから生きているとは思いもしない。

そんな風に思って食べたことはない。



私にとって、食は、

生まれてからずっと続けている習慣の一つにすぎない。


なんというか、朝だから食べ、

昼になったといっては食べ、夜になるとまた食べる。

誰かが決めた一日三回の食事を疑いなくとっているだけなのだ。


この本に登場する「もの食う人びと」は、

生きている。

それは、おそらく著者が、

食うことを通して、人びとの生きている姿、ありのまま捉えており、

そこに食うことと生きることの強い結びつきを感じさせるからだろう。



食べることは生きることと思えば、

食べることを粗末には扱えない。

そう思えば、

私は、大切に感謝して、食べ、大切に感謝して、生きる。


そのとき、私は何を食べるだろう。



ファストフードは、しばらく食べたくないな。

そんな気にさせる本だ。


食べろ、そして、生きろ

著者のそんな声が聞こえた気がした。



偽善を嫌い、本当のことをただ知りたい人に勧めたい本だ。



人のあがきは、もがけがばもがくほど深く沈む

ガラスの靴・悪い仲間 安岡章太郎(講談社文芸文庫)

 

 

この本書いたのどんな人

この本にも収められている「ガラスの靴」でデビューし、この作品は第25回芥川賞の候補となった。

また、「宿題」で第27回芥川賞候補、「愛玩」で第28回芥川賞候補となり、「悪い仲間」・「陰気な愉しみ」では、第29回芥川賞を受賞した。

これらが、デビューから2年の間のことなのだから、著者の才能にはほとほと感心しする。

 

1920年生まれの著者は、戦争を生き、時代の変化と価値観の転換を経て、繊細な心を覗き込むように描き出します。

 

内容

この本では、芥川賞受賞作や候補作も含めた短編が13編が収められています。 

戦争を経て、経済的にも精神的にも、ままならない生活を、劣等感、無力感、焦燥感とともに描いていきます。

 

主人公は、大人だったり、子供だったり、大学生だったり。

私は、転校先に馴染めず、宿題をすることもできずに次第に行き場を失う子供を描いた「宿題」、青年の悪い世界への憧れと心のズレを描いた「悪い仲間」、親友に騙しそのことを懺悔するかのように綴る「王様の耳」が印象的でした。

 

私の感想

この本の登場人物は皆、こうありたいという思いとは裏腹に、物事は小さなズレから次第に、悪い方へ悪い方へ転がっていくようで、そうじゃない、こんなはずじゃなかったと、喘いでいるようだ。

救いを求めようにも、救いはないというのが、この本の特徴なのかもしれない。 

この本を読んでいると、私の方まで息苦しくなる。

 

生きているとうまくいかない、思うようにならないことは多々ある。

そんな時、頑張ればなんとかなる。努力が大切だ。前向きに。

などなど、現代では、自己の努力でなんとかできるかのようにいう。

 

 

しかし、人のあがきは、もがけばもがくほど深く沈む。

そんなとき人は、もう上を見ることをやめてしまうのだろう。

 

特に、戦中・戦後には、私には本当の意味で理解し得ない理不尽かつ不合理なことばかりだったことだろう。

その重苦しさが、この本の奥深くに横たわっている。

 

 

 

 

*おすすめの本リストあります

tetuneco.hatenablog.com

 

「政治的秘境」が俺を呼んでいる アヘン王国潜入記

アヘン王国潜入記 (集英社文庫) 

 

 

この本書いたのどんな人

 この本を書いたのは、ノンフィクション作家であり、

「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。

としている方だ。

私にとっては、誰も行きたがらないところへ行き、誰もやりたくないようなことをする物好きなおじさんという印象だ(いい意味で個性的)。

 

著者のオフィシャルサイトをのぞいて見たら、予想に反した細面で、ぱっと見は繊細な印象のお方でした。

オフィシャルサイトはこちら↓

辺境・探検・ノンフィクション 作家 高野秀行オフィシャルサイト

なんでそんなことするかなぁというようなことを書き綴ったたくさんの作品がブログで紹介されています。 

ブログはこちら↓

辺境・探検・ノンフィクション MBEMBE ムベンベ

 

内容 

著者は、「未開の土地」に強い憧れを抱いていた。

大学時代には、コンゴへ未確認生物ムベンベを探しに行くなどしている。

しかし、著者の生まれた時代には、地理的な探検ができるような場所は、ほとんど残されてはいなかった。

そのため、著者の好奇心は、外部の人間が滅多に足を踏み入れることのない「政治的秘境」へと向かう。

そんな著者が、「政治的秘境」として行き先に選んだのが、アヘンの生産地とされるビルマ(ミャンマー)のワ州だった。

 著者は、アヘンの産地に単身入り込み、その地の人と生活を共にしながら、アヘンの種まきから収穫、そしてアヘンを吸っちゃった上に中毒にまでなった。

 

この本は、その全てを記録したものだ。

 

私の感想

旅の行き先を、人はどうやって決めているのかな。

思うに、綺麗な景色を見たいとか、美味しいものを食べたいとか、何もしないでのんびりしたいとか、そこでしかできない体験をしたいとか、かな。

著者はというと、自分にしかできない体験をしたいようで、ほとんどの人が選ばない旅を選んでいる。

 

私からすると、著者はよほどの物好きなんだろうなと思うけど、それを文章にして本にまとめ、生活の糧にしているのだから、ここまでいくと、物好きも立派な職業だ。

 

加えて、著者の行動力には、いつも感心させられる。

何処へでも行くということのほかに、誰とでも身構えず話せる、そして、現地のものを共に食べ、眠る。

この本ではさらに、「政治的秘境」たる所以に迫る政治的な背景も探っているし、なんといっても、アヘン中毒になるなんて、それはさすがにやりすぎだろう。

 それでもなんだか許せちゃうのが著者の憎めないところで、「たった一人の弟が結婚する」といって、あっさり帰ってくるところもいい。

 

この本は、とにかく私は行きたくないけど、なんだか羨ましい不思議な旅の本なのだ。

 

 

 

 

*私の好きな「高野秀行」おすすめ5選

tetuneco.hatenablog.com

 

心と響き合う読書案内 暖かな読書時間をあなたに贈る本

『心と響き合う読書案内』小川洋子



この本は、著者が本を紹介するラジオ番組をまとめたもので、

季節に応じ、いろんなジャンルの本52冊を紹介する本である。


著者の本は、書店でもよく見かけるし、映画にもなっている。

(この辺りが有名ですかね↓)
博士の愛した数式 (新潮文庫)

でも、私は手に取らないままにいた。

著者が書く、優しくて繊細そうな本たちは、

薄汚れた私に、なんだかちょっとキレイすぎる気がするのだ。


とはいえ著者の本は、気になる。。ので、

著者の心に響いた本を知り、

そして、著者が本をどんな言葉で表現するのかを知ることで、

ちょっと著者を感じてみようと思い、この本を手に取った。


目次をチェックすると、私の好きな本も数冊紹介されていた。

『銀の匙』、『流れる星は生きている』、『羅生門』、『モモ』、『銀河鉄道の夜』、『賢者の贈りもの』

薄汚れた私でも、さあて、どれから読もうかと、ワクワクする選書。。



そうして、本文に目を通すと、
いいじゃないか、響くじゃないか、やっぱり優しいじゃないか。

この本のおかげ、著者のおかげで、
来年も、いい本に出合えそうな気がしてならない。

さてさて、ここに本日記を書いて3年になる。
そして、一昨年からかな、恥ずかしくない範囲の人に、
ここのアドレスを書いた年賀状を出してみた。

おかげさまで、ここを訪れてくれる人も増えた。
そして、今年の年賀状には、すべてにアドレスを書いた。

私のブログを通じて、一人でも多くの人に、本との素敵な出会いがありますようにと、
願ってやまない。


そして、この本は、素敵な本との素敵な出会いを提案する、とてもいい本だと思う。

さあ、私も読もう。
どんな本との出会いが待っているのか、楽しみだ。




*おすすめの読書術の本あります
tetuneco.hatenablog.com